ピアノのエチュード(ピアノ練習曲)について一考察
こんにちは。広島市安佐南区 横山美和ピアノ音楽教室です♪
ピアノを弾く方なら必ず一曲は弾くであろう「エチュード」
エチュード(étude)はフランス語で「練習、勉強」という意味で、英語のスタディ(study)とほぼ同義語で日本語では「練習曲」と訳されます。
声楽を含めたすべての楽器にエチュードが存在し、楽器上達のためには絶対欠かせない存在。
その中でも群を抜いて「ピアノのエチュード」は数が多く、初心者からプロのピアニストがリサイタルで演奏する作品まで、たくさんの曲があります。
今回は、たくさんあるピアノの「エチュード」についてお話ししたいと思います。
ピアノエチュード(練習曲)の歴史
最初にピアノエチュードを作曲したのはD.スカルラッティと言われています。
ポルトガル王女に仕えた際、「どうしてもチェンバロが弾けるようになりたい!」という王女の熱意に押され、技術向上のためのソナタを555曲作曲しました。
当時は「練習曲」という言葉が一般的ではなかったため、「ソナタ」という題名が付けられました。
(ちなみに、この「ソナタ」555曲中最初の30曲は、エクササイズという副題が付いています)
その後、19世紀の産業革命によりピアノがたくさん製造され、その結果ピアノを弾く人が増えました。
しかし、ただやみくもに弾くだけではなかなかうまくなりませんよね(;^_^A
そんなときに役立だったのが様々なエチュードです!
ピアノ普及に伴い、エチュードの需要が高まり、多くのエチュードが作曲されるようになりました。
中でも有名な、C.ツェルニーは数多くのエチュードを残し、現在まで学習者の必須教材となっています。
ピアノのエチュードは2種類
数多くあるエチュードですが、その目的や目指すものによって大きく2種類に分けられます
①技術習得のための実用的な練習曲、教育目的の練習曲集
②演奏会で弾くような作品 高い技術を要し芸術性がある作品
①技術習得のための実用的な練習曲、教育目的の練習曲集
バイエル
一昔前までは、ピアノ初心者の定番エチュードだった「バイエル」
赤バイエル、黄バイエルと言えばどこか懐かしさを感じる方もいらっしゃるでしょう。
(私もバイエル世代です(*^^*))
今でこそ入門用の教材が多数出版されていますが、今もバイエルでご指導される先生も多いです。
今は敬遠されがちなバイエルですが、素敵な曲もたくさんあるので抜粋して練習してみるのも良いと思います。
ブルグミュラー「25の練習曲」
バイエルが終わったら次はブルグミュラーが王道!
ブルグミュラー「25の練習曲」は、すべての曲にタイトルが付けられ音楽的な作品が多く「エチュード」と感じさせない作品ばかりです。
発表会の定番曲もたくさんありますよね‼
・アラベスク
・バラード
・タランテラ
・貴婦人の乗馬、など
C.ツェルニー
ピアノ学習者にとってはお馴染みのエチュードと言えるでしょう。
書かれたのは19世紀初~中頃。
ピアノ教師で作曲家のツェルニーが、主にベートーヴェンの全てのソナタを弾きこなす為の技巧獲得をメインに書いたとされてます。
特に30番はピアノの基礎を学ぶ上で一番重要なエチュード曲集だと言われています。
40番、50番、60番と続きますが…
60番は超絶で全曲制覇した人をわたしは知りません(◎_◎;)
その他
バイエル、ブルグミュラー、ツェルニーはド定番!
ですが他にも技術向上のための作品がたくさんあります。
※モシュコフスキー
15の練習曲 Op.72
20の小練習曲 Op.91
16の技術練習曲 Op.97
※クラーマー・ビューロー
60の練習曲
※J.ブラームス
51の練習曲
この辺りは、技術的に高度で特にモシュコフスキーは音楽的に素晴らしいものが多く演奏会で弾かれることもあります。
②演奏会でも弾かれる高い技術を要し、芸術性が高い作品
教育目的というよりは、テクニックの象徴として作曲家たちが競うように書いた作品です。
特にショパンはこれまでの「エチュード」の概念を覆し、《12の練習曲 作品10》を作曲しました。
これはリストに献呈されており、リストへの挑戦状とも言われています。
そんなリストは、21歳の時にヴァイオリニスト・パガニーニの演奏を聴き「ピアノのパガニーニになる」と宣言。
《パガニーニ大練習曲 S.141》を作曲しました。
リストはその後も超絶技巧を駆使した多くの「エチュード」作曲しています。
これは、ピアノの性能が向上し、演奏技術、表現方法が広がったという時代背景が関係しています。
技巧的な「エチュード」が多く作られたことは、ピアノという楽器の可能性が広がった証拠でもあるのですね。
では、演奏会用作品をいくつかご紹介しましょう。
F.ショパン
練習曲 Op.10 Op.25
リストはこれに感銘を受け、超絶技巧のエチュードを次々と作曲したのです。
ピアノ学習者憧れの曲がたくさんあり、できれば全曲演奏したいな…。
F.リスト
超絶技巧練習曲 S.139
パガニーニによる大練習曲 S.141
2つの演奏会用練習曲
3つの演奏会用練習曲
どの作品も「これでもか~」という超絶技巧でエチュードの概念を超越しています(;’∀’)
聴いているだけで圧巻!
逆に弾くとなると「死ぬ気」で取り組まないといけず、ピアノ弾きにとって大きな挑戦です。
他にもたくさんの演奏会用エチュードがあります。
- ラフマニノフ 練習曲集「音の絵」 Op.33 Op.39
- スクリャービン 12のエチュード Op.8 8つのエチュードOp.42 3つのエチュード Op.65
- ドビュッシー 12のエチュード
- サンサーンス 6つのエチュード Op.111
エチュード(練習曲)が発展したのはなぜか?
エチュードは単なる「練習用作品」の域を超え、その後も多くの作品が生み出されています。
どうして「エチュード」がここまで発展したのか?
これは、非常に興味深いですね。
あくまでも私見ですが、ピアノという楽器の可能性をどこまで広げれるか?という作曲家の挑戦だったのではないかと思います。
そして、超絶技巧をアピールをしたいというピアニストの熱意が「エチュード」をここまで発展させたのではないでしょうか?
過去の偉人たちが残した超絶作品を今は多くのピアニストが弾きこなせています。
当時、化け物と称され「ドヤ顔」で多くのエチュードを作曲したリスト。
現代のピアニストたちを見たらきっとビックリすることでしょうね!
ピアノのエチュード(練習曲)について一考察
1 ピアノエチュード(練習曲)の歴史
2 ピアノのエチュード(練習曲)は2種類
3 エチュードが発展したのはなぜか?
皆さんはエチュードが好きですか?
苦手だな、嫌だな、と思っている方も様々な作曲家のエチュードに触れることで、エチュードに対する見方がかわるかもしれませんね。